2023/12/4
モールドベースの構造
モールドベースとは?
モールドベース(英語:Mold Base)とは、プラスチック射出成形金型の外周部を構成する部品の総称です。キャビティ(固定側)とコア(可動側)を保持し、成形機に取り付ける役割を果たします。
モールドベースは、様々な成形機に取り付けるために、以前は特注モールドベースが主流でしたが、現在では、双葉電子工業製のものを中心に標準規格品が広く流通しています。
モールドベースと金型の違いについては、こちらの記事で詳しく解説しておりますので、気になる方はご覧ください。
>>モールドベースと金型の違い
>>モールドベースの材質
モールドベースの構造
冒頭で、
モールドベース=金型の外周部を構成する部品の総称
と説明した通り、モールドベースは複数の金型部品から成る製品です。したがって、モールドベースを構成する金型部品を一つひとつご紹介していきます。
なお、モールドベースは2種類あり、
- 2プレート構造
- 3プレート構造
という2つがありますので、それぞれ解説します。
2プレート構造モールドベース
2プレート構造モールドベースの主な構成部品は、こちらの12個です。
モールドベース 構成部品名称 | 説明 |
---|---|
固定側取付板 | 固定側型板を取り付けて、成形機の固定盤(樹脂の射出側)にセットするためのプレート。 |
固定側型板(固定側主板) | 金型本体を構成する主要部分で、主に成形品の外観・表面を成形する。雌型、もしくはコアプレートとも。 |
可動側取付板 | 可動側型板やスペーサーブロックを取り付けて、成形機の可動盤にセットするためのプレート。 |
可動側型板(可動側主板) | 固定側主板の対になる金型の主要部分で、成形品の内部形状を成形する。雄型、もしくはコアプレートとも。 |
突出板(エジェクタプレート) | 上板と下板の2枚で構成される。上板に突出しピンとリターンピンを取り付け、それを下板で押さえて固定する。突出板を成形機が突き上げたら、成形品を取り出すことができる。 |
突出しピン(エジェクタピン) | 金型から成形品を突き出すためのピン。 |
スペーサーブロック | 突出板が、突き上げ動作をする空間を確保するためのプレート。 |
ガイドピン | 型締めの際に、固定側と可動側の位置決めに使われるピン。 |
ガイドブッシュ | ガイドピンを嵌めこむブッシュ。 |
リターンピン | 型締めの際に、突き出された突出板を元の位置に押し戻すためのピン。 |
ロケートリング | 成形機に金型をセットする際に使われる、位置決め用の凸状リング。ロケートリングを固定盤の穴と嵌め合わせることで、金型を成形機の中心に取り付けることができる。 |
スプルーブッシュ | 溶解樹脂を成形機から金型に流し入れるための”湯道”の役割を果たす充填ノズル。 |
3プレート構造モールドベース
3プレート構造モールドベースは、上記の2プレート構造モールドベースを構成する主要部品に加えて、ランナーストリッパープレート(ストリッパープレート)を備えています。
ランナーストリッパープレートは、固定側型板と可動側型板の間に挟まれる3枚目のプレートで、ショット後に、突出しピンから成形品を引き剥がす(=ストリップする)役割があります。
2プレート構造モールドベースと3プレート構造モールドベースの使い分け
2プレート構造と3プレート構造の違いについてはご理解いただけたかと思います。
では、両者はどのように使い分けられているのでしょうか?
結論、モールドベースのプレート構造は、充填する樹脂材料の種類や成形品形状に起因するゲート方式によって決定されます。
射出成形金型のゲート方式は、
- サイドゲート
- サブマリンゲート(トンネルゲート)
- ピンゲート(ピンポイントゲート)
という3つがあります。
各ゲート方式の特徴やメリット・デメリットは、以下の通りです。
ゲート方式 | 特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
サイドゲート | 文字通り、金型の横から樹脂を充填 | 多数の小物部品を一度に成形するのに向いている | ゲート跡が残るため、成形後にゲートカットが必要になる |
サブマリンゲート | 金型開閉時に、ゲート跡を自動で切断 | ゲートカットが不要なため、生産性が高い | 流動性が低い樹脂材料の場合、充填効率が悪く成形不良の恐れがある |
ピンゲート | サイドゲートとサブマリンゲートのいいとこ取りをしたゲート方式。 | 多数の小物部品を一度に成形するのに向いており、且つゲートカットが不要 | 流動性が低い樹脂材料の場合、充填効率が悪く成形不良の恐れがある |
これらのうち、サイドゲートとサブマリンゲートの場合は2プレート構造を、ピンゲートの場合は3プレート構造を、それぞれ採用します。
「特注モールドベース受託センター」のモールドベース製作
「特注モールドベース受託センター」は、精密モールドベースの特注製作や規格品のモールドベースへの追加工などの実績が多数ございます。中でも、回転機構が伴った多数個取り金型のように構造が複雑で規格品では対応できない精密モールドベースや、SKD11・SKS3のようなHRC60前後の超高硬度材モールドベースの特注製作を得意としております。さらに、「この部分にも穴を開ける必要がある」、「穴径を広げなければいけない」、「もう少し精度が高いモールドベースがほしい」といった、規格品モールドベースへの追加工のご依頼も承っております。
多いと10~12枚。成形品の取り出しやすくするための機構。
>>特殊機構モールドベース製作のサービスページ
モールドベースの特注製作事例
「特注モールドベース受託センター」が過去に製作した特注モールドベースをご紹介します。
①化粧品業界向けスライド入れ子割型(テーパー研磨)
こちらは、化粧品容器向け射出成形金型に使用されるモールドベースです。
まず本体をマシニング加工したうえで、入れ子部分に斜め研磨を施しております。
本製品の特徴は、スライド入れ子が割型になっており、且つ入れ子側面がテーパーになっているため、高い精度が要求される点です。これらの精度が悪いと、かじりや金型の劣化・摩耗を招くため、研削・研磨によって割型の合わせ面や摺動部を丁寧に仕上げることで、高精度・高品質を実現しました。
>>詳細はこちら
②内ネジヒンジキャップ用ベース ラック式ネジ回転抜きヒンジキャップ型
こちらは、化粧品容器のヒンジキャップ向け射出成形金型に使用されるモールドベースです。
本製品の特徴は、成形品であるヒンジキャップに内ネジを切るためラック式ネジ回転抜き機構を設けている、2個取り金型である、そして総割スライドタイプであるという3点です。ネジ抜き機構があることで設計が複雑になり、さらに2個取り金型のため製品部の精度・形状は高いレベルが要求されますが、優秀なCAD・CAMオペレーターが在籍しており多数個取り金型の実績を多数持つ当社だからこそ、お客様の要求精度・品質を満足したモールドベースを製作することができました。
>>詳細はこちら
特注モールドベースのことなら、お気軽にご相談ください
特注モールドベースをお探しの方、特注品から規格品+追加工に切り替えてコストを抑えたい方、その他金型トラブルにお困りの方は、お気軽にご相談ください。