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技術コラム

2023/12/6

    モールドベースの材質

    モールドベースとは?

    モールドベース(英語:Mold Base)とは、プラスチック射出成形金型の外周部を構成する部品の総称です。キャビティ(固定側)とコア(可動側)を保持し、成形機に取り付ける役割を果たします。

    モールドベースは、様々な成形機に取り付けるために、以前は特注モールドベースが主流でしたが、現在では、双葉電子工業製のものを中心に標準規格品が広く流通しています。

    >>モールドベースと金型の違い
    >>モールドベースの構造

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    モールドベースに使用される材質の種類

    モールドベースに使用される材質は、以下の4つに分類することができます。

    • アズロールド鋼
    • プリハードン鋼
    • 焼入れ焼戻し鋼
    • 時効処理鋼

    アズロールド鋼

    一般に使用されることが多いのは、金型材料としては比較的硬度が低く快削なアズロールド鋼です。

    S50C・S55CなどのSC材(機械構造用炭素鋼)やSCM435・SCM440といったSCM材(クロムモリブデン鋼)が、アズロールド鋼の代表です。ABS樹脂やPP樹脂(ポリプロピレン)など、柔らかい汎用プラスチックで成形する場合に、アズロールド鋼のモールドベースが向いています。硬度を示すHRC(ロックウェル硬度)は、およそ10~20程度です。

    プリハードン鋼

    アズロールド鋼を上回る機能性をもつ金型材料が、プリハードン鋼です。

    一般的な炭素鋼の場合、焼入れ温度800~850℃、焼戻し温度420℃前後で熱処理するのに対し、プリハードン鋼は500℃と比較的高温で焼戻しする調質処理を行うことにより、機械的性質を均一化し、靭性および耐摩耗性を向上させることができます。このことから、プリハードン鋼は、別名”調質鋼”とも呼ばれます。

    プリハードン鋼は、

    • 高硬度且つ耐摩耗性が高い(HRC30~45)
    • 予め熱処理を施しており機械加工後の熱処理が不要なので、歪みの心配が無く、且つ工程短縮にもなる
    • 調質処理により結晶を微細化しているため、切削性が高い

    といったメリットがあります。ただ、熱処理済みで硬度が高い材質というのは実は諸刃の剣で、加工後に熱処理を施して硬度をさらに引き上げることが難しいです(窒化処理で表層を硬化させることは可能)。プリハードン鋼よりさらに高い硬度・耐摩耗性が必要な場合は、後述する焼入れ焼戻し鋼を使用することになります。

    プリハードン鋼のモールドベースを採用するケースとしては、成形品の材質がPOM樹脂、ナイロン、PPS樹脂、MCナイロンなど耐摩耗性が高いエンジニアリングプラスチックの場合、あるいは耐食性が必要な場合、耐久性を上げてショット数を増やしたい場合などがあります。

    最後にプリハードン鋼の種類についてご紹介します。JIS各鋼材メーカーが独自に開発し販売していますが、①SC系、②SCM系、③SUS系の3つの種類があります。

    ③のSUS系プリハードン鋼は、PMMA・PC樹脂(ポリカーボネート)・PETなど透明性が高い樹脂で成形する場合に採用されることが多いです。というのは、金型表面を鏡面に仕上げる必要があるため、磨きやすく表面がなめらかな金型材料である方が良いからです。

    具体的にどういった材質・鋼種があるかについて、詳しくは下表を参照いただければと思いますが、特に有名なプリハードン鋼を3つ紹介します。

    • STAVAX:SUS420J2系。耐食性・耐摩耗性に優れ、鏡面加工やシボ加工も可能だが、切削性はやや劣る。
    • NAK55:析出硬化系。切削性・溶接性に優れ、鏡面加工・シボ加工も可能だが、時効硬化特性があるため、焼入れ・焼戻しは不可。
    • NAK80:NAK55とほぼ同様の特性を持つが、鏡面加工性がより優れる。

    焼入れ焼戻し鋼

    焼入れ焼戻し鋼は、プリハードン鋼よりもさらに高硬度な鋼種です。硬度が高い分、金型の耐久性は上がりますが、その反面切削性はプリハードン鋼に劣ります。

    時効処理鋼

    時効処理鋼は、時効硬化処理により非常に高い強度・硬度を得ることができる野に加え、靭性に富んでいます。最も有名な時効処理鋼であるマルエージング鋼は、ロケットや人工衛星など航空宇宙分野においても使用されている鋼種です。

    なお、プリハードン鋼、焼入れ焼戻し鋼、時効処理鋼は、いずれも優れた機械的性質を持っていますが、その反面非常に高価です。そのため、入れ子構造の金型の場合は、入れ子だけプリハードン鋼、モールドベースはアズロールド鋼にするというケースが少なくありません。

    詳しくは、こちらの表をご覧ください。

    分類材質代表的なメーカーブランド硬度目安(HRC)
    アズロールド鋼SC系(S50C・S55C)13
    SCM系(SCM435・SCM440)13
    プリハードン鋼SCM系KTSM31(神戸製鋼所)
    SD61(日本製鉄)
    28
    SCM改良鋼PX5・PX7(大同特殊鋼)33
    SKD61改良鋼DH2F(大同特殊鋼)40
    SUS420J2系S-STAR(大同特殊鋼)
    STAVAX(ウッデホルム)
    27~35
    SUS630系NAK101(大同特殊鋼)35~40
    析出硬化系HPM1・HPM-PRO(日立金属) 
    NAK55・NAK80(大同特殊鋼)
    KAP65 ・KAP88(日本高周波鋼業)
    37~43
    SUS系(快削)G-STAR(大同特殊鋼)
    RoyAlloy・RAMAX(ウッデホルム)
    33
    焼入れ焼戻し鋼SKD61DAC(日立金属)
    ORVAR(ウッデホルム)
    50~53
     SKD11SLD・HPM31(日立金属)
    DC11・PD613(大同特殊鋼)
    56~62
     SKD11改良鋼SLD8(日立金属)
    SLEIPNER(ウッデホルム)
    56~62
     SKD12RIGOR(ウッデホルム)
    KD12(日本高周波鋼業)
    58~61
     SUS420J2S-STAR
    STAVAX
    ※焼入れ焼戻し後
    50~55
     SUS440CELMAX(ウッデホルム)
    SM3(日本高周波鋼業)
    55~60
    時効処理鋼マルエージング鋼MAS1C(大同特殊鋼)50~55
    ※時効処理後

    「特注モールドベース受託センター」のモールドベース製作

    「特注モールドベース受託センター」は、精密モールドベースの特注製作や規格品のモールドベースへの追加工などの実績が多数ございます。中でも、回転機構が伴った多数個取り金型のように構造が複雑で規格品では対応できない精密モールドベースや、SKD11・SKS3のようなHRC60前後の超高硬度材モールドベースの特注製作を得意としております。さらに、「この部分にも穴を開ける必要がある」、「穴径を広げなければいけない」、「もう少し精度が高いモールドベースがほしい」といった、規格品モールドベースへの追加工のご依頼も承っております。
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    モールドベースの特注製作事例

    「特注モールドベース受託センター」が過去に製作した特注モールドベースをご紹介します。

    ①化粧品業界向けスライド入れ子割型(テーパー研磨)

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    こちらは、化粧品容器向け射出成形金型に使用されるモールドベースです。

    まず本体をマシニング加工したうえで、入れ子部分に斜め研磨を施しております。
    本製品の特徴は、スライド入れ子が割型になっており、且つ入れ子側面がテーパーになっているため、高い精度が要求される点です。これらの精度が悪いと、かじりや金型の劣化・摩耗を招くため、研削・研磨によって割型の合わせ面や摺動部を丁寧に仕上げることで、高精度・高品質を実現しました。
    >>詳細はこちら

    ②内ネジヒンジキャップ用ベース ラック式ネジ回転抜きヒンジキャップ型

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    こちらは、化粧品容器のヒンジキャップ向け射出成形金型に使用されるモールドベースです。

    本製品の特徴は、成形品であるヒンジキャップに内ネジを切るためラック式ネジ回転抜き機構を設けている、2個取り金型である、そして総割スライドタイプであるという3点です。ネジ抜き機構があることで設計が複雑になり、さらに2個取り金型のため製品部の精度・形状は高いレベルが要求されますが、優秀なCAD・CAMオペレーターが在籍しており多数個取り金型の実績を多数持つ当社だからこそ、お客様の要求精度・品質を満足したモールドベースを製作することができました。
    >>詳細はこちら

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